日本が拉致問題を解決できない本当の理由

日本が拉致問題を解決できない本当の理由 荒木和博 (2009/7/1)

 

民間の立場で拉致問題解決のために尽力されている方の本。あくまで荒木氏の主観による見方ではあるが、知らないこともあり参考になる。

P128

それらのことをすべて放置し、あるいは隠蔽して、歴史問題で謝罪の認識まで示して、与党自民党と、第一野党社会党、そして外務省が日朝国交正常化に向けて突っ走ったのである。

現在(2024)から四半世紀前、小泉訪朝の前の日本はこのような状況だった。日本の国会議員と外務官僚が拉致問題を最優先とせず日朝国交正常化に突っ走った理由は何だろうか?間違った歴史観と国家観が原因ではないか?もしくは何らかの個人的な見返りの期待でもあったのだろうか?

 

P154

これらのことから、政府がやろうとしていたのは、「死亡」を既成事実化し、「生存者」の家族と「死亡」を伝えられた家族を分断することで、救出運動を抑え込み、拉致問題を棚上げして、「あとは生存者の帰国ないし家族の再会も、死亡者の遺骨返還もすべて日朝国交交渉のなかで話し合う」という流れを作ることにあった。

小泉訪朝と拉致被害者5名の帰還の時期の政府の動きをみてこう感じたということ。

 

P174

政府が拉致認定しているのは全部で十七人だが、これは拉致事件全体からすれば、まさに氷山の一角である。日本国政府はそれ以外の拉致被害者がいることは認めているが、認定者をふやそうとしない。認定するには警察の捜査が必要である。そして、何度も言うように、警察は証拠がなければ拉致と判断しない。ところが証拠がでるかというと、十年、二十年、三十年、ものによっては半世紀以上前のことである。当時大部分の家族は拉致など想像もしていないから、その疑いを持って調べてはいない。しかも拉致する方はもともと犯罪行為としてやっているわけで、証拠は残さないようにしているのだ。

拉致問題は国家の安全を脅かす事件なのだから、有事に準ずる対応が必要ではないか?

 

P191

日本人のなかには「かつて朝鮮に悪いことをした」という「贖罪」意識が刷り込まれているが、北朝鮮の工作活動を許し、拉致の解決を長引かせているのは、こうした心理というか「空気」が重要な要素になっている。

事実に基づかない自虐史観の刷り込みが、日本人自らの安全を脅かす状況を作ってしまっている。